2002年09月25日

紀ノ川の生態系について

紀ノ川河口と和歌川河口をめぐって

紀ノ川河口と和歌川河口の共有する特徴として干潟の生態系が上げられる。昨年、環境省は全国の「重要湿地」にこの両河口の一つ和歌川河口干潟を選定した。
これは、干潟面積に拘らず生態系の豊富さと希少種の存在が突出しているからである。

和歌川河口干潟は約35ヘクタールと小規模ではあるが、生態系の豊富さ、特に稀少種が多い干潟として貴重であることが指摘されている。
これに類する紀ノ川河口干潟は、底生物の豊さに加え越冬渡り鳥の休息地としての重要性を担っている。

干潟は戦後開発等により約4割が喪失したと言われる。今日干潟の重要性が論じられるのもこれ以上の喪失が進めば取り返しのつかない生態系の異変が起こることが指摘されているからである。

9月12日、国土省は全国39河川の2百51地点を対象に、水質、自然の豊かさ、親水性、河川敷への利用等16項目を点検して、5段階評価の結果表を公表した。
紀ノ川は残念ながら、和歌山市、九度山町、五条市において共に評価2であった。これは、各項目において危険信号を発せられている数値である。特に、ここ10年前公的機関から水質の悪化等が指摘されているだけに信憑性を疑うことは出来ない結果が出ていると謙虚に受けとめなければならない。

問題はこれからである。来年から、上流で大滝ダム、下流で紀ノ川大堰の供用が始まる。また、紀ノ川河口干潟地において、和歌山北バイパス高架橋の工事が始まっている。干潟底生物が特に影響を受けるところである。一部移植された生態系の状況報告が危惧される。

先日8月22日に和歌の浦住民に対して、県から高潮対策を目的とした片男波護岸工事の説明があった。これは、和歌の浦干潟に既存護岸から沖だし2メートル、長さ約1000メートルに及ぶ埋立工事である。又しても干潟が犠牲になる。

渋滞緩和、高潮対策と私達住民に役立つことばかりを標榜して行う公共事業の名のもとに自然破壊が目の辺りで繰り返される。私達の利便性が自然の恵みを壊滅に追いやっている国土の現状は想像を絶する。事実を単純に考えて、和歌川河口干潟は「のりの笹立つ」で歌われた面影がなく、のり漁は壊滅的激減の状態である。また、私達の日常食生活に欠かせない貝類、アサリ、シジミは国土の干潟からほとんど採取できない。そして、この実態を経済産業省が一番よく理解している。

紀ノ川河口はその重要性から全く逆行した河川整備が行われている。これは、紀ノ川河口だけではない99年に施行された新河川法に基づく理念が現実の整備実態並びに計画は乖離の一途を辿っているとしか考えられない。近年の理念と現実の捩れ現象を戻す為の新河川法であり、2000年の河川審議委員会での答申であったものが、全く機能することなく反って自然破壊を加速させる結果になっているのが現実である。それが上記の工事実態であり計画である。

公的機関が水質の悪化ならびに河川調査による総合的危険状態を警告していることはもはや現実は取り返しのつかない瀬戸際にきていることの事実である。この機会を真摯に受け止めて抜本的な対策を講じなければ、日本は自然の恵みを自らの手によって壊滅させると同時に私達が死地を求める結果になる。これは火を見るよりも明らかなことである。

然るに、国会で「自然再生推進法案」が審議される事態は、環境省ならびに国土省の見解を疑わざるを得ない。また、世界自然保護基金ジャパン(WWFJ)がこの再生法案に前向きなのにはしょうこりもなく開いた口が塞がらない。私は常々、世界自然保護基金、日本自然保護協会、日本野鳥の会は自然を守らない。自然を守るのは、私達郷里の住民、市民であると主張してきている。

今回の紀ノ川河川整備計画は生態系に十分配慮した護岸整備を基本理念に置き、流域住民の意見を最大限尊重した計画書が作られるべきである。流域住民と生態系の周辺は先見的理解に基づき共存してきた。そして、共存の歴史がいろんな文化を育んできた。
計画書は文化を支えるのが流域住民であることを基盤に置いたものになることを提唱する。

                         岩畑 正行
                         2002.9.25